2018/6/7

Vol.11 スペインのセレナータ / グザヴィエ・ドゥ・メストレ

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スペインのセレナータ / グザヴィエ・ドゥ・メストレ

一時期は、まるで絶滅危惧種のようであった男性ハーピストだが、蓋を開けてみれば、20代のレミー・ヴァン=ケステレンやサーシャ・ボルダチョフなどの有望株が出てきていて、先ずはひと安心だ。一方で、そんな中で孤高の存在として今も頂点に君臨し続ける男がいる。メストレである。今回、ソニー・クラシカルから6作目となる待望の新作がリリースされた。何とスペインがテーマである。

ヤング・ライオンたちの猛追もどこ吹く風、メストレがその玉座を譲らない大きな理由が、本作を聴いていて判ったような気がした。先入観として、メストレはハープの概念を大きく変える革新者のイメージが強いが、彼は概念の破壊者ではけっしてなく、実のところは順応・同和の能力がかなり優れているからこそ、広く長く君臨していると思う。あたかもメストレ以前からあったかのようなアプローチ。ハープで弾くことが当たり前であったかのようにアレンジを施された曲を、滑らかで自家薬篭中のもののように振る舞う演奏技術。考えてみれば、これらパターンは既に過去の作品でも試行されていたのだ。「エトワールの夜」では母国フランスのイメージを、ドビュッシーというテーマから透かしみたり、「ヴェネチアの夜」では17世紀のイタリアの華やかさを演出したり、一見ソロ演奏のベスト盤のような顔をした「モルダウ~ロマンティック・ソロ・アルバム」もよくよく考えれば8割以上がロシアの楽曲を採用した東欧へのオマージュであったり、各地の名曲を「最大公約数的に手堅くまとめてみました」ではなく、あくまでもメストレの作法がスタンダードだという味付けが施されて供されてゆく。そこが他の追従を許さない核心なのである。

さて、くだんのスペイン・・・であるが、ラテン音楽の宗主国と言っても過言ではないこの国の音楽は、リズムが不可分だ。独特のリズムという命題を、ハーピストがどう向き合うのか。メストレは、飛び道具を繰り出した。カスタネットの女王ルセロ・テナを呼んできた。スペインでは人間国宝並みの扱いを受け、スペイン人の、スペイン人らしいリズムを導入するなら、この人をおいて他はないような存在だ。彼女を呼ぶだけなら、お金があれば呼べる(と思う)。だがこのクラスとの共演となると、腕がなければ務まらない。しかも、本作でファリャのスペイン舞曲第一番やサルスエラの間奏曲、アルベニスのソナタなど、いかにもスペインという代表曲で、堂々の名演を繰り広げている。まるで共演が初めてであることなどおくびにも出さず、懐の深い演奏で応えるこの風格。彼の演奏会の曲として確立した「アルハンブラ宮殿の思い出」も入っており、異郷の音楽という違和感がまるでないまま、あなたは再び夢心地を味わう。


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