2018/6/7

Vol.15  野の花に / 西村光世 , ペトリ・アランコ

銀座十字屋で取り扱うCDの中から、スタッフが実際に聴いてみて、みなさまにおすすめしたいCDをレビュー形式でご紹介します。CDレビューの一覧はこちら

 

 
野の花に / 西村光世 , ペトリ・アランコ

まったくお門違いの印象なのかもしれないが、かつて映画「ビルマの竪琴」で奏でられた「埴生の宿」の情景を思い浮かべてしまった。イングランド民謡なのに、竪琴で奏でると、なぜか日本人として郷愁を覚え、懐かしいとさえ思ってしまう。異文化の親和性というのは、われわれが人間である以上、国や生まれは違えども、どこかに共通項は必ずあるわけで、海を隔てた向こうの国々にも、心に残る良いメロディやリズムであれば、同じ人間が紡いだ詩であり曲なのだから、音楽は国境とか宗教観とか、主義主張の差異などは軽く乗り越えてしまうのだろう。

このCDはリマスターされた、いわば復刻版である。1994年にフィンランドで録音された。西村光世が、べトリ・アランコという現地のフルートの名手と共に、自分の師でもある日本の千秋次郎という作曲家の手になるハープ曲集を吹き込んだ成果である。絵入れ作家としても活動、今も地味だが実直な活動をしており、けっしてコマーシャリズムは活発とは言えない。しかしながら、ここに記録されているのは、音の言霊であり、「日本人の心」なるものは海外であっても、あるいは担い手がフィンランド人であろうが、福音は伝播することを証明しているように思えるのだ。組曲「七つの遠い思い出」を聴いていると、ハープとフルートのマッチングは、何も洋風にだけ合うというのはなく、琴と尺八の和のテイストに通じるような掛け合わせでも合うことを確信する。ハープ用に書いた曲であっても、それが雅楽のような響きを伴うのも、音楽そのものが担い手の心の反映であるからに他ならない。復刻も、多くの心に引き寄せられて成就したものだと信じたい。ちなみに西村は、ミルドレッド・ディリングから譲ってもらったハープを弾いているという。アメリカにハープを広めたひとりであり、アメリカン・ハープ・ソサエティの創立者のひとりである。俳優のローレンス・オリヴィエやハーポ・マルクスも弟子だった。無類のハープ愛から124台のハープ・コレクションを誇った。ほとんどが博物館行きの逸品で、100年ものが揃う。その内の1台を彼女が今も大切に弾いて息を吹き込んでいる。国境だけはなく、時空も超える・・・というわけか。


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