イベントレポートある日の銀座十字屋
ホール主催イベント

ダブル・レインボウ 大友太郎〜佐藤厚子 フルート&ハープ・コンサート

 派手な装いではないのだが、その上質さゆえに品格が滲み出てくるコンサート。この日は、そんな表現がしっくりきた。大友太郎は、フルートの詩人の異名をとりながら、一方で教育者として名伯楽とされ、佐藤厚子もその実力を高く評価されながら、横浜国際コンクールで「音楽教育者賞」に浴する立場。失礼ながらどちらかといえば、縁の下の力持ちとして業界を陰で支えている功労者のイメージが勝るデュオに思えた。しかし、演者と聴衆、実力者と実力者。互いの技量を知り、本質を見抜く者たちには、確かにタイトル通り「二つの虹が互いに交錯するような、眩いばかりの光彩と憧れを喚起するペアリング」だったに違いない。

ダブルレインボウ

 序盤のヘンデルからフォーレ辺りまでは、長身の大友から振り下ろされる天上からの調べには、まさに脱帽し魅入られた。太く明快な音質ながら、流れるが如くでリリカルな節回しは、詩人の異名そのもの。佐藤のハープは、最初かなり緊張したあとが散見したが、一種の武者震いだったのであろう、「塔の中の王妃」でソロを演じるあたりから本領発揮。途中休憩を挟んだ後半は、たった2曲ながら彼らが「羊の皮を被った狼」であることをまざまざと見せつける場面で終始して幕を閉じた。大友の「無伴奏チェロ組曲第2番」。圧巻の言葉しか出ない。「何だ、ありゃ?」とつぶやいてしまったほどの習熟度にド肝を抜かれる。そして、佐藤によるダマーズの衝撃。フルートとハープの相性の良さを、母がハーピストであったことから熟知していたダマーズは、確かに多くの室内楽器楽曲を残したし、地味だが優美で印象深い曲が多い。だが、それは聴いている側による半可通の理解であり、実際は相対的に演奏の難易度は高く、転調をどう優雅に弾きこなすか、秘めた華やかさをいかに引き出して表現するかなど、演奏者側に隠然と支持されてきた作曲家の作品ゆえ、ハードルは結構高い。かように後半は、玄人好みながら、迫真の演奏に素人筋でも分かる凄さが伝わってくるような内容だった。満員の会場には、二人の生徒と思しき聴衆も見受けられたが、彼らもきっと「先生ってやっぱり凄いんだ」と、改めて師事できた誇りを抱いたはずだ。再演を望む。