イベントレポートある日の銀座十字屋
ホール主催イベント

水織ゆみ ハッピー・ニューイヤー・コンサート

 その実力・才能からすれば、水織ゆみが日本を代表するシャンソン歌手のひとりであると断言しても、けして過言ではない。しかし、彼女が知る人ぞ知る的な存在であり、我々が寡聞にして知らないのも、致し方ない部分もある。それもアーティストの姿勢があったからだと思うようになった。

水織

 演劇の研鑽を積む一方、フラメンコやタンゴやジャズ・ダンス、コーラスも習得。シャンソンも30年近いキャリアがありながら、本格デビューは40歳を過ぎてからだった。それでもすでに訳詞、作詞で独自の解釈や伝わり易い言葉を厳選、ステージ構成・演出も手掛けていて、衣装の早変わりも得意とする才能のひとだ。十字屋ホールに何で今まで出演していなかったのか不思議なくらいで、やっと至近距離で彼女のステージを堪能できたのだった。

 人生の半分くらいのところで、シャンソンで生きようと決め、それを機に請われれば北は稚内、南は宮古島まで、精力的に歌い続けている。今ではまるで歌ったところが故郷になってしまう勢いで、小樽・札幌・京都・高知といったところが地元有志のパワーでリサイタルを開催している。なかなか真似の出来ることではない。都会型とは逆に、ファンを大切にする姿勢からか、自ら歌いに地方へ出てゆく。首都圏でなかなか見かけないのも道理である。しかし、いざ都内で歌うと、三越劇場も満席にしてしまう。つまり、それだけ熱心なファンが多いということだ。歌声はあくまで朗らか。高音がたおやかに伸びる。また、メッセージがまるで良質の化粧水のように、こちらの内面に浸透してくる。背中を押されるような元気をくれる。ビジュアルやトークにも長けたステージは、とにかく飽きがこない。コンサート、リサイタルというよりは、水織ゆみ小劇場といった感じがピッタリだ。こんな高揚感や考え抜かれたステージを観るのは、昨今少ない。そういえば、誰かに覚えた感慨と似たような感じが伝わってくる。
・・・そう、越路吹雪。