イベントレポートある日の銀座十字屋
ホール主催イベント

ニューイヤー・プレミアム・コンサート

 十字屋ホールの十八番といえる、ハープ&フルートのコンサートの新春口開け第一弾は、早川りさこと宮崎由美香のデュオだった。昨年は、海外の新鋭レミー・ヴァン=ケステレンをフィーチャーするなど、殊、ハーピストに関しては実に多彩で世界レベルの実力者が去来してきたホールだが、やはりTVなどで割と身近で堪能できる権威として、NHK交響楽団のハープ奏者である早川りさこが至近距離で演奏してくれるというのは、非常にリアリティあるプレゼンテーションである。ダブルネームでフィーチャーされた宮崎も、その実力は折り紙つきで、早川と丁々発止のデュオを展開できること自体で、その腕を窺い知れる。

ニューイヤー

 今回は、二毛作のコンサートとなった。前半は、「ママのためのハープ&フルート・コンサート」。後半は、アロマを焚いたホールに夜空を模したライティングによるバックドロップを仕掛け、幻想的なムードの中、大人向けの上質な演奏を味わえるという趣向だった。それでも、実力者たちのライブに付き物である、曰く言い難い緊張感と敷居の高さは多少残っていて、事前にはそこが懸念されたわけだが、それらは早川の意外ともいえる胸襟開いたプレゼンテーションで一掃されてしまった。曲ごとに丁寧な説明や日常のおしゃべりに近いトークを織り交ぜて、ともすればスノッブに陥りがちな雰囲気を、フレンドリーで明朗なものへ変えていた。転じて演奏となれば、さすが第一人者という風格が滲み出てくるので、内容的には詰まったコンサートだったと思う。とりわけ、印象的だったのが前半。小さな子供が帯同するコンサートといえば、鑑賞側への配慮として、いかにも子供向けのお手盛り曲がテンプレートのように並んでしまうのが常だ。テーマは、母を癒すこと。聴き手が母子だから、分かり易く耳心地がよい曲であれば何でもよい・・・という訳でもあるまい。難しい曲とか、聞いたことない曲だろうという配慮は、実は演奏側の思い過ごしであったりもする。その点、今回はメンデルスゾーン、フォーレ、ラヴェル、イベールなど、それこそテーマに沿った、それでいてそれぞれの楽器のエキスパートが主張するに相応しい選曲がなされ、その戸惑いの部分を丁寧な解説で埋めていたというイメージを感じ取った。

 室内楽という空間を、狭いという感覚から広くオープンな空間へ解き放つ演奏は、形式的なクリシェにハマってしまうイベントにとっては良いお手本である。