イベントレポートある日の銀座十字屋
ホール主催イベント

新たなハープの響きを求めて

 女三人寄れば、姦しい。だが、四人寄れば主張になるというお話。十字屋ハープ・カルテットは、銀座十字屋が135年を迎えた際に記念結成された、堀米綾・田中淳子・稲川美穂・小林雅美から成るハープ・ユニットだ。コンサートを開くのは、二年ぶりとなった。そもそも当時から妙齢の美女ばかりであったから、数年もたてば当然結婚や出産など人生の大きなイベントがあって、なかなか活動ができないまま歳月が過ぎていた。徐々に落ち着いて、そろそろ頃合いという時期に、十字屋ホールが閉まることが告げられて、今回の再結集に繋がったという。

十字屋カルテット1

 振り返ったほうがハードルは低かった。手練れのハープ名曲数えうたをやれば、復帰もさらに早かったかも知れない。ところが、グループが問うたのは、「新たなハープの響きを求めて」だった。演奏曲のラインアップには、ジルヒャー、ピアソラ、ドミンゲスなどの名前も候補で上がる。意欲的に可能性を拓こうという、一過性のリユニオンには終わらせないような余韻と意思を終始醸し出す。ゲストで参加した綱川泰典のフルートも、数曲だけだが清涼感と詩的なメロディの流れを生み出している。特にラテンの曲は、リズムの取り方が難しい。尚更、4人で揃えるとなれば、タイミングや呼吸など、調整には時間がかかることは想像に難くない。ところが、この日のハーモニーには一切の破綻がなかった。数年前、当代選りすぐりのハープ奏者であったという経緯から、「歳月が邪魔をして演奏のブランクが悪影響を及ぼすのでは」というリトマス試験紙を突き付けられていたにも拘らず、4人はどこまでも気高く、優美で、華やかだった。

十字屋カルテット2

 銀座十字屋が、ハープ弾きの代名詞として選んだこの4人のハープが、聴けているうちは十字屋ホールも平穏であったのだ。むしろこれから熟達への道を歩んでゆくことを思うと、今回で可能性が広がったことで、当然他の場で演奏をしてゆくことになるかと思う。グループ名称の変更だってあるかもしれない。「そうか、十字屋ホールではもう聴けないのか」・・・そう思うと、急に寂寥感が湧いた。願わくば、いつまでも続けてほしいユニットである。