イベントレポートある日の銀座十字屋
ホール主催イベント

午後のサロン 三遊亭円楽「話芸で描く一つの宇宙」

2016.3.8 午後のサロン 特別企画

円楽さんは主催者のマダム中村が以前からご出演いただきたかった方でした。午後のサロンも残すところあと2回。念願がかない特別企画でご登壇いただくことができました。さすがに実力と人気を兼ね備えた落語家さん。お忙しくてスケジュールが合わず、ホールの空きとの関係で8日と相成りました次第。会場は満席です。円楽さんが出演されているTVCMのクライアント株式会社日本香堂の稲坂氏が一言挨拶され、詩人谷川俊太郎の“愛をテーマにしたお線香”をお客様のお土産にして下さいました。

三遊亭円楽

円楽さんは20歳の時に5代目圓楽師匠に見初められて以来46年間落語家一筋に歩んでこられました。実年齢よりお若くインテリ落語家と呼ばれる円楽さんは笑顔で満場の拍手に迎えられ、おしゃれな着物姿でも魅せてくださいました。
「一人生まれるためにはふた親がいて、ふた親が生まれるために4人、それが25代もさかのぼると室町時代になり、総数3355万人、そう数えると日本人はみんな親戚みたいなものです。」と聞かされますとその場の空気が一気に和みます。「祖先は江戸湾の漁師で、おじいさんも船で生活していた。何故船かというとポンポン船で外国船にものを売って生活していたそうです。」わずか150年前から身近なことが今は知らない遠い世界を切り口に“まくら”が展開してゆきます。最初から笑いが絶えません。
墨田区石原町で生まれた円楽さんは小さい頃から錦糸町、浅草、銀座が遊び場だったそうです。
「特に銀座のデパートは子供には宝箱。今懺悔するとおもちゃ売り場で、こっそりおもちゃをポケットに入れたことが母親に見つかり一緒に松屋デパートまで行って親が頭を下げて謝ってお金を払ってくれました。親も恥をかいて子供にいけないことを教えてくれたものでした。」と今の親子の風潮に遠くからやんわりと釘をさします。浅草から日本橋、16番の都電のただ乗り、遊び仲間の子供達と強行突破した思い出も告白しますが、この話はあとへ続く2席の落語の複線になっており、これぞ正統のまくらを聞く思いでした。
さて、銀座のことをお話してとマダム中村にお願されていた円楽さんでした。
「銀座の旦那衆の会の飲み会では20も年の違うおじさんたちが色々教えてくれ、口の悪い下町と違って『うまくなったね!』『忙しくなっても暇があったら遊びにおいで!』と優しくいわれると行かなければならない気持ちになるという・・・銀座は実に商売がうまい!(落語家として)売れてから、おかげでただ働き」の商売が増えた。」(笑い)。
「1603年徳川家康が江戸に幕府を開いたが何でも江戸に決まる前に小田原と鎌倉が候補に上がった。鎌倉は砦としては良いが広がりがない。千代田は湿地帯で開発がやり易いそれは水路が使えるから。“のの字の技法”で広がりと集約が上手にできて街づくりが容易。行徳から塩、その他にも野菜。江戸は初物食いが盛んでネギさえも初ものを珍重した・・・」また「家康が源氏にならって血筋を残す、その後大奥が作られ、御三家を作る。」などしばし江戸の歴史が円楽さんの味付けで紐解かれる。「今日は高尚、木久扇さんとは違う。」(笑い)と銀座から江戸、落語「紀州」へと流れるように舵を切る。お客様はいつのまにか前のめりです。

落語「紀州」あらすじ
7代将軍家継は4歳で将軍職を継ぐが満7歳で他界、御三家が将軍の後目を引き継ぐ件で先ず尾張の殿様が江戸城に参内する折に鍛冶屋の前を通り“トンテンカン”の鍛冶屋の槌の音が空耳で“テンカトル”に聞こえる。今の時代でもカラオケで遠慮は禁物のように、将軍にと問われ先ずは遠慮して辞退、紀州さまも一度は辞退するが結局引き受ける、帰り道鍛冶屋の前では「テンカトル」やはり紀州も再び遠慮しうるに違いないと予想を建てたところへ鍛冶屋の刀を水につける音「キシュー」(笑い)
前半が終了して少し休憩・・・マダム中村が「とても引き込まれました。」と興奮気味に感想を述べる。
二席目の着物にお着替えされたおしゃれな円楽さんが再登場。その時によって演目を決める時と決めない時があるそうで、こうして話をしながらも常に脳はくるくると次を考えて動いているそうです。
『暴れん坊将軍』で松平健さんが八代将軍吉宗を演じた時に円楽さんは京都撮影所でめ組の卯之吉役で出演、延べ5年も京都撮影所に通った時の面白いエピソードも色々披露されました。
二席目の落語は「一文笛」。西の落語界の巨星故米朝師匠の作った演目だそうだ。米朝師匠は学研肌。
他人の噺は勝手にやってはいけない。事前に了解を得ることが落語界のルールになっているそうだ。
「一文笛」はよい噺。と円楽さん。落語「一文笛」を名話芸で披露され拍手喝采となった。今回は大きな笑い小さな笑い沢山の笑いに包まれた円楽師匠の話芸の神髄を大いに感じられた会となりました。
「一文笛」あらすじ
『貧乏で駄菓子が買えない子供を見かねてすりが一文笛を盗み、子供の袖へ入れる。その行為があだとなり元武士の父を持つ子供が窮地に立ち井戸に身を投げる。一命はとりとめたが責任を取ったスリは自分の右手の指を2本、切り落とす。』
そこからストーリーは人情味を帯び噺は・・・下げ秀逸。一度きいてみて下さい。

福原彰美

音楽は福原彰美さんのピアノ演奏でした。ポピュラーなクラッシックの名曲の数々演奏して感動を誘いました。

「フランツ・リスト 3つの演奏会用練習曲より 第3番変ニ長調「ため息」
ヨハネス・ブラームス インテルメッツォ 作品118第2番 イ長調
フレデリック・ショパン 前奏曲集作品28より、第15番「雨だれ」変ニ長調
フレデリック・ショパン 幻想即興曲 作品66 嬰ハ短調
エルガーの「愛の挨拶」

お若いながらに実力者でとても努力家でいらしてと評判の方。その通りに心を込めた演奏にお客様もマダム中村も深く感動されている様子が伝わってきました。これからの活躍が目に浮かぶようでした。