イベントレポートある日の銀座十字屋
ホール主催イベント

ミュージック・クルーズ2015 桜

2015.5.30 十字屋ホール
 少し前にファジーという言葉が流行った。曰く、曖昧で柔軟性があり揺らぐこと。サックスは、木管楽器でありながら、金属で作られているものがほとんどで、木管の動的性能と金管のレンジの広さを双方に受け継ぎ、運指や発音の容易さで、近代楽器でも人気がある。人の歌声に最も近いサウンドが出るとも云われる。だが歴史が比較的浅いのと、リード楽器特有の音の振動から、出てくる音はファジーで暫し「揺らぐ」という。実は、この特性こそα波が出易く、ファジーという言葉はサックスの魅力に直結しているともいえる。

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 桜カルテットをステージで聴いたとき、その反動として「ワールド・サキソフォン・カルテット」を比較していた。ジャズでは有名なサックス四重奏で、このファジーであることを逆手に取った即興集団であった。楽器の音色や特性はそのままに、技量と個性が半端ではない4人が繰り出す音塊は、不況和音の洪水。まさにカオスであり、逸脱であり、破壊であった。だが不揃いの魅力と、音楽として成立させる4人の技量の高さで、観る者を驚嘆させる。終わったあと、どっと疲れるのがこのグループだった。比較対象としては大きく出てしまったが、この桜カルテットは、その対極にあるグループである。

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 ひとえに、良い意味でサックスという楽器をコントロールしているところに、桜の魅力がある。その名の通り、女性だけのカルテットが力強く才能を満開にさせている点も好ましい。一方、音を御しているからこそ、アンサンブルが効いている反動として、静謐さと単調さとトレードオフになる。まして、このグループはクラシックが基調になっているから、全体のメリハリに留意することになる。そこを、勝負どころを分けたプログラムで飽きさせない工夫で補った。これは卓見だと思う。たとえば、前半ではフォーレの「ドリー組曲」やリヴィエの「グラーヴェとプレスト」を持ってくる。集中が効く最初の30分でじっくりとアンサンブルの妙を堪能させる。その後に、「リベルタンゴ」でアウトし、2大ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」と「ウエスト・サイド物語」のメドレーで親近感を覚えさせ、最後は日本のうたのメドレーに繋げる。お囃子の世界まで下りてくる。「炭坑節」のサビにはさすがにぶっ飛んだ。終わったら、皆、目を細めて頷いている。満足の証しだろう。内観を深め、抑制しながら、楽器本来の感度を上げてゆく。グループ自体は結束させながら、そこにゲストなどを投入し、小さな波紋を投げてみると、ますますこのグループ、面白いのではないか。気が強く技量が高いソプラノ姉さんが、少し走り気味だけどドライブ感を出す次女のテナーを上手く引っ張りながら、しっかり者の三女のバリトンが全体を支え、末っ子のアルトが伸び伸びしたマイペースの音で横串を刺してゆく。実はそんな個性溢れる四姉妹のアンサンブルである、と見た。

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