イベントレポートある日の銀座十字屋
ホール主催イベント

グレート・アメリカン・ソングブック

2015.6.6 十字屋ホール
 異色な登場、かも知れない。日本の横田基地に勤務する空軍兵士たちが結成しているバンド、「パシフィック・トレンズ」が銀座中央通りにある十字屋ホールで演奏した。銀座十字屋は昨年創業140年を迎えたが、終戦後にGHQが日比谷にあったので、十字屋はしばしばFENのラジオ放送の収録現場に使われたりして、少なからずアメリカ軍とは縁があった。そして今回、楽器の日に因んで、楽器を演奏し、仲間と共にバンド演奏を通じて、心を通わせる悦びをということで、アメリカ空軍のパシフィック・トレンズが登場したという背景があった。

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 やはりユニークなのは、演奏メンバーが全員制服を着て演奏すること、表向きはアマチュアのはずだが、演奏がやけに上手いことである。見栄えも、サウンドも、結構シャープなことが特長だ。それもそのはず、今回演奏したメンバーは、先ずアメリカで厳しいオーディションをパスしている。それに、現在はアメリカ空軍に在籍してはいるものの、音楽の世界ではプロでやってきたメンバーもいる。グレン・ミラー楽団に長く在籍していた者、プエルトリコでは屈指のパーカッション奏者として謳われた者など、枚挙に暇がない。何でもできる音楽家たちが集まっているわけで、道理で上手いはずである。そして、勤務の一環である以上、制服の着装は必須であり、演奏中でも緊急事態のスクランブルが発生すれば、即座に演奏を止め、基地へ馳せ参じるということになる。

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 今回、「グレート・アメリカン・ソングブック」というタイトルが付いた。アメリカが生んだジャズの名曲「イン・ザ・ムード」からスタートし、後に派生していったポップス、果てはマイケル・ジャクソンまで。短い時間ではあるが、アメリカの音楽の潮流を俯瞰したショー構成になっていた。また、アメリカ生まれではないけれども、日本とアメリカの架け橋となったような曲「上を向いて歩こう(SUKIYAKI)」を披露し、どの世代が聴いても存分に楽しめる内容となった。東北大震災を機に演奏し始めたという「リンゴの唄」も、日本の戦後の復興シンボルになった曲であり、復興というキーワードにはうってつけの曲と言えるだろう。また、軍楽隊であるという強面な印象を払拭するくらいに、彼らは洗練され、にこやかなステージ・マナーと、よく練られたプログラム構成で、友好交流と呼ぶに相応しいステージでわれわれを楽しませてくれたのである。なかなか接する機会が少ないかも知れないが、機会があればぜひ聴いてほしいバンドである。彼らは日本をベースに、太平洋諸国がテリトリーなのでベトナムやインドネシアなどでも演奏しているらしい。武器を楽器に替えた親善演奏。こうした交流は、実に尊い。また、ここ銀座で彼らの演奏に触れたいものだ。