トークを通じてそれぞれの個性が整理されたところで、ミニコンサートが幕を開けました。言葉で語られた魅力が、堀米さんの演奏によってどのような響きとして現れるのか。会場には心地よい緊張感が漂います。
まずは、サルヴィハープス「T2」の軽やかさを最大限に活かした演奏から始まりました。
堀米: まずはサルヴィハープスのT2で、パッヘルベルのカノン、そしてスコットランド民謡の「グレンリベット」という曲を演奏したいと思います。グレンリベットはダンスの速い曲です。それではお聴きください。

(演奏:T2「カノン」~「グレンリベット」)
堀米: 選曲の理由としては、カノンは低音のベースの上に旋律が重なっていく曲ですが、この楽器は響きが軽やかなので、ミュートに気を取られすぎず、個々の音がクリアに遠くに飛んでくれる感じが曲に合っているなと思いました。グレンリベットは左手がジャカジャカと弾いて音数を増やしていくのですが、響きすぎない楽器なので音が潰れずに届くなと思って選曲しました。
【会場の様子】
T2の澄んだ音が響き渡ると、観客の皆様はその音色に耳を傾けていました。特に速いテンポの「グレンリベット」では、一音一音が粒立って聴こえる心地よさに、リズムに合わせて小さく頷いていらっしゃいました。
続いて、ライオン&ヒーリー「リリック」へと楽器を持ち替えます。
堀米:続いてライオン&ヒーリーの「リリック」です。一音一音が美しい印象があるので、クープランの作品で「恋の鶯」を演奏します。これは音数少なく一音一音を聴かせる感じなので向いているかなと思いました。続いて「グリーンスリーブス」を私のアレンジでお届けしようと思います。ちょっと指を慣らしてから演奏しますね。

(演奏:リリック「恋の鶯」~「グリーンスリーブス」)
二つの楽器の個性が実演されたところで、会場の皆様に今の直感をお伺いする時間が設けられました。
司会: ここで新作2機種、どちらがお好みだったかお伺いしたいと思います。お手元の赤いシート(T2)と青いシート(リリック)を出していただいて、せーので上げてください。
【会場の様子】
会場が赤と青のシートで鮮やかに彩られました。直感で選ぶ楽しさに、皆様が笑顔でシートを掲げていたのが印象的です。この時点での「好み」が、後のサプライズでどう変化していくのか。

ここで、今回のイベント一番の盛り上がりを見せた「観客参加型」のサプライズ企画が。
堀米:ここで一つサプライズを。最近書き上げた新曲「スノー・クリスタル」をお披露目します。雪の結晶が冷たい冬の空からチラチラと降りてきて、少しずつ積もっていくイメージで作りました。
司会:この曲はどのような構成ですか?
堀米:変拍子が欲しくて、ベースは11/16拍子です。途中で12/16や6/8に変化していきます。来場者の皆様の投票で多かった、リリックの方で演奏させていただきますね。
「どちらの楽器で聴きたいか」の問いに、再度、赤(T2)と青(リリック)のシートが会場で一斉に上がります。僅差で青が選ばれた瞬間、会場には一体感のある笑みが。新曲の幻想的な旋律がリリックの深い残響に乗って響き、冬の情景が目の前に浮かぶような感動的なひとときとなりました。
演奏の余韻が残る中、来場者の方々から熱心な質問が飛び交いました。
来場者A:先生がT2からリリックに持ち替える際、「テンションが違うので指を慣らしてから」と仰っていました。具体的にどのような感覚の違いがあるのでしょうか?
堀米:弦をどのくらいの力で掴むか、ということが違うという意味です。T2は思い切り音をかき鳴らすのがやりやすい楽器なのですが、リリックで、同じテンションで音数の少ない曲を弾くとちょっと強すぎちゃうので、掴む力を少し調整しました。あと、張ってある弦がそれぞれ違うんです。T2はバイオカーボン弦、リリックはシルクガット(ナイロン弦)です。触ってみた時の感触や掴み具合が違うので、切り替える時に気をつけました。
来場者B:初心者が「リリック」のような残響の長い楽器を使うのは難しいですか?
堀米:最初は驚くかもしれませんが、慣れの問題です。残響が長い楽器は「ミュート(音を止める技術)」を細かく行うことで、より繊細な表現が身につきます。一方でT2は全音域の響きが一定なので、余計なことを考えずに音楽に没頭できる良さがありますね。
司会:お仕事で使用するハープの種類はどうやって決めていますか。
堀米:音色が美しくて自分が好きな音であることが第一条件です。あとは仕事では過酷な状況、ライトがすごく当たって熱いとか、外から中への寒暖差とか、そういう場面でも弦がおかしくならないメカニックの丈夫さはすごく大事です。あとは運びやすさも重要です。大きすぎず、他の楽器と混ざった時に埋もれない、混ざり合いが気持ちいい楽器というポイントで選んでいます。

最後は、これから楽器を選ぶ皆様へのエールで締めくくられました。
司会:素晴らしい演奏とトーク、ありがとうございました。最後に楽器を購入する際のアドバイスがあればお願いします。
堀米:まず自分が外せないポイントを一つ持ってから試弾に行くのがおすすめです。音色が好き、色が選びたい、運びやすい軽さがいいなど、何か決めておいてからとにかくたくさん弾き比べることです。できれば誰かに聴いてもらったり、自分が離れて聴いたりできると、客観的に選べると思います。
司会:現在、ハープフェアを開催しております。3月29日までここハープショールームでたくさんの楽器を弾き比べできますので、ぜひご来店ください。最後に先生、告知等あればお願いします。
堀米:アイリッシュハープとグランドハープ両方でユニットを組んで活動しています。ジャズピアニストの林正樹さんのバンドでハープを弾いたCD『間を奏でる』も持ってきました。あとは3月にオカリナとハープのユニットや、チェロとのコンサートも予定しています。SNSで発信していますので見ていただけたら嬉しいです。

堀米綾さんの最新情報
堀米 綾 Aya Horigome(プロフィール)
東京都出身。11歳よりハープをはじめる。東京藝術大学ハープ専攻卒業。 同声会新人賞受賞。 JazzPopHarpfestival2007(ソルトレイク)参加を転機に、自由なパフォーマンスを追求しようと決意。様々なアーティストと積極的に共演を重ね、ハープの新たな可能性を探求している。
レコーディング分野にも定評があり、映画「すずめの戸締り」「天気の子」連続テレビ小説「らんまん」大河ドラマ「八重の桜」ドラマ「初恋」「岸辺露伴は動かない」「東京オリンピック2020開会式・閉会式」、映画「翔んで埼玉」出演ほか参加作品多数。
現在「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」「アンサンブル東風」ピアニスト林正樹氏率いる「間を奏でる」オカリナと小型ハープ2台による「ゴシキヒワ」「Rosco Motion Orch.」のメンバー。 サクソフォン、二十五絃箏とのデュオを継続して開催。 これらのグループやソロ、オーケストラで、各地で演奏、複数のアルバムを発表している。世界的タップダンサー熊谷和徳氏の公演にも度々参加している。ラジオOTTAVAプレゼンター。
製品情報
Salvi Harps T2
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