2022/1/21

【CD視聴レビュー】ハープ・スペクタクル / 邊見美帆子

ハープ・スペクタクル / 邊見美帆子

このアルバムで、邊見は自身の到達点にしてスタート・ラインに立ったと言えるだろう。ハープを弾く者たち全ての憧れといえるフランス近代の曲を散りばめながら、構成や曲解釈に到るまで実に丁寧な考察が成されている。

通常、頭から組曲を聴かされる構成はあまりない。だが、グランジャニーのハープ楽曲の引き出しの多さを、敢えて自身の多彩な技のバリエーションへと転化してみせることで、導入にしては十分な掴みを得た。その後は、衒いのない選曲は誰もが話題にしやすい、ハープ好きなら誰もが納得するものばかり。ドビュッシーやフォーレなどのお馴染みな曲でリスナーの胸襟を開かせておいて、ピエルネやダマーズといった「好きというだけは弾きこなせない曲」でエンディングへ向かう。だが大上段から「どうだ」とばかりにテクニックで聴く者を終始圧倒するのではなく、ハープの音色の美しさを最大限引き出そうとする意図が感じられるし、初めて聴く者がハープの音色や多様性に目覚め、理想を喚起しやすい構成になっている。そう、ここには共感・共有という今の時代のキーワードが詰まっているのだ。そして最後の曲。自作曲を持ってきた。ジャンルを超えて活動してきた邊見らしい耳心地のよい曲で、作曲という分野で新たな道が拓ける予感と、ステージがまたひとつ上がった印象がある佳曲だ。本作が、彼女が単にキャリアの道程をおさらいしただけではなく、冒頭で新たなスタートをきったと断じた理由なのである。

またファースト・アルバムながら、本作は収録においては手練れの意匠が籠められていることに注目したい。音楽がサーバからアップロードやダウンロードされて、カジュアル化が進む一方、手元に置いて聴き継いでゆくCDに高音質なハイレゾ音源で収録し、鮮烈なハープの音を慈しむように楽しめる工夫はとても重要なことだと思う。こんなところにも、温めてきた最初のアルバムへの思い入れが感じられる。名刺代わりの一枚にしては、かなり心に残る作品である。

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