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Vol.4 風と愛~日本のハープ音楽80年/中村愛

銀座十字屋で取り扱うCDの中から、スタッフが実際に聴いてみて、みなさまにおすすめしたいCDをレビュー形式でご紹介します。CDレビューの一覧はこちら
 

 


風と愛~日本のハープ音楽80年/中村愛

ハープを弾きはじめる時って、大抵は「憧れ」がきっかけだと思う。キラキラした音。演奏姿の華やかさ。まさにザ・ヨーロッパって感じのオーラ。しかも試奏してみると、技術要らずで、とりあえず音は出るじゃない。ハープの深みにはまってゆくのは、大同小異そんな端緒かもしれない。しかし、いざ始めてみると、弾きたい曲の楽譜の種類がピアノほど多くはないし、いくつかの定番曲を習ってモヤモヤしながら練習している・・・。

このアルバムでの中村愛の主張は、「ハープはもっと自由で、しかもまだまだ知らない曲が身近にたくさんあるよ」ということ。着眼点がすごいのが、日本に目を向けたことだ。ハープと欧文で書くとエレガントだけれど、要するに竪琴。ハープは古代ヨーロッパからの伝統楽器というけれど、日本にも古くからのハープの原型といってもよい箜篌(くご)という楽器も正倉院で見つかっている。彼女は温故知新を提示し、足元に放置されていたお宝の山に手を付けたといえる。当然、日本人作曲家たちもハープ曲を残していた。ゴジラで有名な伊福部昭、黒澤明の盟友・早坂文雄、そして清瀬保二など、われわれには映画音楽で馴染みの人々がハープ曲を作っていたり、「ウルトラセブン」で有名な冬木透がアレンジを施したりと、このアルバムには二重三重の仕掛けがある。日本人ながら、初めて聴いた曲もいっぱいあったり、自分としては“新曲”を聴いているつもりなのに、なぜか懐かしさのあまり涙がこぼれたり。熱燗とコンビニのおでんに合うハープのアルバムなんて初めてだよ。彼女は、クリスマス用には「クリスマスファンタジー」というCDも作っていて、同作もおススメだけど、冬の前はコレ。美しく優雅なハープだけれど、内面を振るわせる共鳴力も秘めた楽器なんだね。

 


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